流れ雲

繰り返しと積み重ねの過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく、神戸発信

妄想劇場

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


知られざる命 
Author: 壇次郎
北海道を舞台に、歴史に翻弄された
小さな命がありました。
太平洋戦争から近代に至る出来事に
感動される物語です。
誰もどうすることの出来ない悲しい事実が
ありました。
命の大切さを考えさせられます……  


知られざる命-序章-
その当時、日本の食料は、殆どが配給制でした。
人々は皆、飢え、栄養失調の子供も
日本中のあちこちに見られる様な世の中でした。
そんな食料の少ない世の中です。
ポチに与える餌にも三好家では苦労する様になっていました。
一般家庭からでさえ、残飯は殆ど出て来ない状態です。
泰蔵は自分の食事を減らし、
その分をポチに分け与えていました。
国は日本中の家庭から、あらゆる                  
鉄と言う鉄を徴収していました。
トタンの塀や鉄のドブ板、お寺の鐘までもが国に持って行かれ、
戦争の道具と変って行きました。
出兵は南方のみならず、中国大陸、極寒の満州にも
多くの日本人が兵隊として国に尊い命を捧げていました。
とうとう、国は兵隊さんに着せる防寒服の生地でさえ、
調達できなくなって来ていました。
そこで国は、北国の国民に飼い犬の提供を義務付けました。
寒さに強い北国の犬の毛皮でもって、
兵隊さんの防寒服を作るとのことでした。
旧盆が過ぎると北国も涼しくなってきます。
ポチが三歳になった秋深まる頃でした。
泰蔵、真里子の暮らす家の近所にも数件、
犬を飼っている家があり、とうとう、その地区にも
「犬を差し出せ」と言う命令が国からやって来ました。
その話を母親とおばあちゃんが話しているのを
泰蔵はそっと聞いていました。
華 「ねえ、おばあさん、
 今度は犬までもが持って行かれるそうですよ」
鷹 「えっ、犬までもかい? 
 いやなご時勢になったもんだね。
 いったい犬をどうするって言うんだい?」
華 「犬の毛皮で兵隊さんの防寒着を作るそうですよ。
 北海道の犬は毛皮が厚いから、いいそうですよ」
鷹 「うちにもポチがいるけど、取られてしまうのかい?」
華 「なんだか、組ごとに抽選するそうですよ」
鷹 「いったい泰蔵になんて言えばいいんだろうね・・・」
華 「泰蔵には明日、私から話してみますけど・・・」
泰蔵は、布団の中でそんな二人の会話を聞いていました。
そして、泰蔵にはひとつの考えが浮かびました。
翌朝、泰蔵は、まだ夜が明ける前、
誰も起こす事無く静かに外へ出ました。
そして、そっとポチを連れて急いで家から離れて行きました。
泰蔵はポチと共に、遠くの山に向かいました。
しかし、歩けど歩けど、山は近くに見えて来ません。
泰蔵は途中、小川の水を飲み、
空腹感も忘れてポチを連れて歩き続けました。
何も知らないポチは、いつもの散歩の様に、
道草の臭いを嗅ぎながら泰蔵に引かれ、
付いて歩いていました。
それでも昼時を過ぎた頃になると、
回りには民家もまばらになってきました。
泰蔵はひたすら歩き続けました。
遠くの山に陽が傾きかけた頃、
とうとう泰蔵は力尽き、
その近くにある雑木林の中にポチを連れ込みました。
「ポチ、いいかい? 
もう、おまえと一緒にはいられないんだよ。
ここで独りで生きていくんだよ。お腹がすいたら、
鶏でも、なんでも採って食べるんだよ。
野良犬だって、独りで生きているんだから、
ポチも頑張るんだよ。戦争が終わったら、
必ず迎えに来るからさぁ・・・。
それまで、誰にも見つからない様にしなきゃだめだよ。
絶対に、街に戻ってきちゃダメだよ」
泰蔵は、ポチにそう言い聞かせながら、
ポチの首輪を外しました。
そして、振り返る事無く、
泰蔵は外したポチの首輪と紐を握り締め、
今来た道を走って引き返しました。
泰蔵は、しばらく走り、振り返りました。
なんと、ポチはすぐ後ろに付いて来ていたではありませんか。
「だめだよ、付いて来ちゃ・・・」
泰蔵は、再び走り出しました。
でも、ポチはいつまでも、いつまでも
シッポを振りながら付いて来てしまいます。
今度、泰蔵はポチを道端の木に繋ぎました。
そして、ポチを残し、また走り出しました。
今度、ポチは必死になって泰蔵を呼んでいます。
いつまでも、いつまでも声を振り絞って、
泰蔵を呼び続けています。
でも、泰蔵は振り返る事無く走り続けました。
ポチの泰蔵を呼ぶ声が聞こえなくなった頃、
泰蔵の目からは一気に涙がこぼれ始めました。
それでも泰蔵は、泣きながら家へと走り続けました。
泰蔵が家に独りたどり着いたのは、
もう、夜も遅くなった頃でした。
母親も、おばあちゃんも、ポチが泰蔵と共に居ないので、
泰蔵が何を仕出かしていたかは、
おおよそ察しがついていました。
二人とも、心は心配でいっぱいでしたが、
じっと泰蔵の帰りを待っていてくれました。
泰蔵が家に着くなり、母親は何も言わず、
わずかながらの夕食を泰蔵に出しました。
下を向いて黙って遅い夕食を取る泰蔵の目からは、
幾粒もの涙が絶え間なく零れ落ちていました。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…

 

円舞曲(わるつ)
作詞:阿久悠・作曲:川口真

誰かが 円舞曲(わるつ)を 踊っています
幸せあふれた 二人です
私は飲めない お酒を飲んで
泣きたい気持ちを おさえます
海鳴り 漁火 海辺のホテル
一人に悲しい ワルツの調べ


昨日という日は歴史、
 明日という日はミステリー、
  今日という日は贈り物、
今は、歌のプレゼント(贈り物)

時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる